【ブログ】統計学 第4回のポイント:データを読む②(相関と因果)
2026年10月27日
はじめに:「1つの変数」から「2つの変数の関係」へ
第3回は1つの変数を読みました。第4回は「握力が強い人ほど歩行速度も速いのか」のように、2つの変数の関係を読みます。ゴールは3つ。散布図を読んで相関係数の「向き」と「強さ」を説明できること、「相関≠因果」を交絡因子と中間因子の例で説明できること、そしてグラフや数字の誇張に気づいて確認すべき点を言えることです。
授業で使った臨床の例を中心に、要点を振り返ります。
1. 散布図と相関係数:関係の「向き」と「強さ」
2つの量的変数の関係を見るときは、数字より先に散布図を描きます。横軸に握力、縦軸に歩行速度をとり、1人を1つの点で表すと、右肩上がりなら「握力が強い人ほど速い傾向」が見えます。点が線に近くまとまるほど関係は強く、外れた点がないかもここで確認します。

この向きと強さを1つの数字にしたのが相関係数rです。rは必ず−1から1の間に入り、符号が向き(+は右肩上がり、−は右肩下がり)、大きさが強さを表します。目安は、0.7以上で強い、0.4〜0.7で中程度、0.2〜0.4で弱い相関です。授業の模擬データでは、握力と歩行速度がr=0.82で強い正の相関、年齢と握力がr=−0.64で中程度の負の相関でした。

読み方には注意があります。「年齢と握力の相関が−0.5」は「年齢が高い人ほど握力が弱い傾向」であって、「必ず弱い」でも「年齢が原因と証明された」でもありません。若くて弱い人も高齢で強い人もいます。また、rは直線の関係しか測れず、U字型の関係では0に近くなります。外れ値にも弱く、たった1点でrが0.01から0.78に変わることもあります。相関係数を見るときは、必ず散布図とセットで見てください。

2. 相関≠因果:相関が生まれる4つの理由
小学生の足のサイズと学力テストの点数には、r=0.88という強い相関があります(イメージ)。でも「足が大きくなると賢くなる」わけではありません。学年が上がると足も大きくなり、学力も上がる。学年という隠れた第3の要因(交絡因子)が両方に影響して、見かけの相関(擬似相関)が生まれているのです。

相関が生まれる理由は4つあります。①本当の因果(訓練→回復)、②逆の因果(体力が低いから運動しない)、③交絡(学年→足のサイズと学力)、④偶然(人数が少ないとたまたまrが大きくなる)。相関を見つけたら、①と決めつけず、②〜④の可能性を必ず考えます。

リハの例で考えましょう。「訓練回数が多い人ほど回復が良い」という相関があったとします。訓練の効果かもしれませんが、軽症の人ほど訓練に耐えられて回数が多く、軽症の人ほど回復も良い、つまり重症度が交絡している可能性があります。このデータだけでは区別できません。対策は、重症度ごとに分けて比べる層別、回帰分析による統計的な調整、そしてくじ引きで群を分けるランダム化比較試験(RCT)です。

3. 交絡因子と中間因子を見分ける
第3の変数には、もう1種類あります。筋力トレーニングをすると筋力が上がり、その結果として歩行速度が上がる。この「筋力」のように、原因と結果の間の道すじにある変数を中間因子といいます。ストレッチ→柔軟性→転倒減少の「柔軟性」も中間因子です。
見分け方は、第3の変数が「両方の原因」なら交絡因子、「途中の経路」なら中間因子。扱いは正反対で、交絡因子は取り除き、中間因子は残します。筋力をそろえて比べてしまうと、筋トレの効果が消えて見えるからです。

因果を主張するには、時間的順序、交絡の除去、用量反応、一貫性、もっともらしさといった複数の条件が必要です(ヒルの基準)。論文の「関連があった」と「効果があった」は別物です。
4. 数字とグラフの「見せ方」にだまされない
売上が年3億円ずつ増えただけのデータでも、縦軸を115〜135億円に切り取ると急成長に見えます。グラフを見たら、まず縦軸が0から始まっているか、期間が都合よく切られていないかを確認します。3Dの円グラフは手前が大きく見えるので要注意です。

医療の数字でよくあるのが相対リスクです。転倒率が2%から1%に下がれば「50%減」ですが、絶対差は1%。元の割合も見ます。「利用者の80%が満足」は5人中4人かもしれないので、人数(n)を確認します。平均在院日数のような「平均」は、第3回で学んだとおり一部の大きな値に引っ張られていないか、中央値もあわせて見ます。
ニュースや広告の数字を読むときのチェックリストは5つ。誰が・何人に・どうやって調べたか。平均か中央値か。縦軸と期間。「関連」を「原因」にすり替えていないか。何と比べているか。「本当? 誰が? 何と比べて?」と一度立ち止まる習慣をつけましょう。

まとめと次回予告
第4回の要点は3つです。

- 散布図で2変数の関係を見る。相関係数r(−1〜1)は符号が向き、大きさが強さ。直線関係のみ・外れ値に弱いので、必ず散布図とセットで見る
- 相関≠因果。相関の理由は「因果・逆の因果・交絡・偶然」の4つ。交絡因子(両方の原因)は取り除き、中間因子(途中の経路)は残す
- 数字とグラフの見せ方に注意。平均のわな、軸の目盛り、期間の切り取り、相対リスク。「誰が・何人に・何と比べて」を確認する
第5回はPC演習です。平均・SD・相関係数を自分で計算し、ヒストグラム・箱ひげ図・散布図をExcelで描きます。ノートPCを必ず持ってきてください。事後課題は、身の回りのニュースで「相関≠因果」の例を1つ探すことです。

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